No.10 「天使の梯子(はしご)」を見たことがあるでしょうか?

更新日:2024.1.7

私たちが見えるモノの限界は、0.1 mm(=100 μm)程度と言われています。これは毛髪の太さほど であり、バクテリアやウイルスなどはその 100 分の 1 や 10,000 分の 1 の大きさですので、到底肉眼では認識することができません。部屋に舞う塵なども同様に、私たちの身の回りには普段生活している 中では気づかないほどの小さな塵埃(じんあい)にあふれています。

昨今のメディア・ニュースでは専ら PM2.5 といった微小物質が取り上げられていますが、大気中の 塵埃による人体への健康影響を問題視するようになったのは近代に入ってからです。当初は雲や霧、 スモッグなど気象環境の研究の一環として塵埃計測がなされていました。

一方で室内の塵埃管理、つまり「クリーンルーム」は第二次世界大戦時のマンハッタン計画が起こり です。原子力開発の過程に生成された放射性微粒子を除去するために HEPA フィルタが開発されまし た。軍事兵器に用いられる電気部品の不良率が高く、製造環境下の清浄度(浮遊塵埃の汚染度)に関連 があると考えられたためでもあります。現在では HEPA フィルタよりも塵埃の捕集効率が高い ULPA フィルタも存在し、スーパークリーンな環境も多く見られる様になりました。クリーンルームの「空気 清浄度の分類(クラス分け)」規格 ISO 14644-1 ではクラス 1, 2 がそれに該当しますが、旧規格(米国 連邦規格: Federal Standard 209E)では表現されておらず、半世紀中での技術進歩が伺えます。

クリーンルームの清浄度管理には、パーティクルカウンタが欠かせません。パーティクルカウンタとは空気中や液体中にある塵埃や不純物などを計数する計測器のことです。筆者はパーティクルカウンタのメーカーの勤めですが、クリーンルームやクリーンブースに入り浸ることが多々あります。如何せんクリーンルームの中には日光が入りませんから、ふと散策、外出した際には空模様を観察します。

皆様は、遥か遠くの雲の隙間から差し込まれた光のスジを見たことがあるでしょうか?

「天使の梯子(はしご)」、「ヤコブの梯子」と呼ばれることがありますが、これは大気中の塵埃や水 滴に光が散乱することで生じる「チンダル現象」の一種です。パーティクルカウンタも近い原理で、計 測対象にレーザ光を照射することで生じる「光散乱」を利用して、微小な塵埃を計測しています。筆者 が 2023 年には一度もお目に掛かれなかった「天使の梯子」ですが、今年こそは是非写真に収めたいも のです。皆様もふとした時に空を見上げてはいかがでしょうか。

リオン株式会社 微粒子計測器事業部 開発部 長部航

JADCAコラム一覧

  • お電話でのお問い合わせ

    03-6274-6064

    お急ぎの方はお電話にてご連絡ください。
    受付時間:平日9:00〜17:30

  • メールでのお問い合わせ

    入会に関するお問い合わせ、そのほか協会へのお問い合わせはフォームよりご連絡ください。

    Contact Form