空き家問題の現状

更新日:2024.12.18

私はエコステージ協会の評価員として、JADCA会員の皆様と環境マネジメントシステム・エコステージ、及び会員企業特有の要素を取り入れたJADCA版EMS(環境マネージメントシステム)の構築・運用のお手伝いをして来ましたが、今回は、もう一つの活動である空き家問題についてご紹介します。

1.人口減少の中で増える住宅総数

少子化が叫ばれて久しくなり、我が国の総人口は2005年に戦後初めて前年を下回った後、2008年にピークとなり、2011年以降は11年連続で減少しています。加えて、空き家数の発生に大きな要因と考えられる世帯数の推移で見ても、2015年頃がピークでその後は、世帯数も減少局面に入っています。そのようなトレンドであるにも拘わらず右のグラフは総住宅数が増加を続けていることを示しています。即ち空き家数がさらなる増加が懸念される状態にあります。

 

2.空き家が生む様々な問題

空き家の定義では一般的に考える空き家とは異なるものも含まれますので、ここでは住宅街に点在する長期間無人で使用されていないものを対象にお話しします。
空き家から発生する主な問題には、①放火など火災の恐れ、②不審者・犯罪者の侵入、③景観の悪化、④倒壊のおそれ、⑤衛生状態の悪化が挙げられます。
火災の発生原因はたばこ、たき火、コンロと続き4位が放火ですが、被害額別に見ると1位放火の疑い、2位放火で空き家が放火の対象となるケースが多いのですが、人が住んでいる家屋への放火は「現住建造物等放火罪」として重罪に問われるのに対し、空き家への放火は心理的ハードルが下がることが犯行を生む遠因ではと考えられます。

また、無人となった空き家では様々な害獣が住み着き近隣住民に多大な迷惑を及ぼすことがあります。実際に私の知人で、隣家の空き家からに庭に入り込んだ1メートルを超える蛇を発見したショックからの高血圧でその後無くなるという悲しい出来事もありました。

 

3.空き家が増える背景

近隣住民に多大な迷惑を及ぼす空き家ですが、空き家を生み出す要因の一つに、ライフスタイルの変化も関係しています。分かりやすい例を挙げますと、一人っ子の男女が結婚すると近い将来に空き家が2軒発生するということです。いつ頃からか親との同居はほとんどなくなりましたので、結婚した子供たちは家を出て、自分たちで居を構えるのが普通になり、親がなくなるか、施設に入るとそこに空き家ができるという現実は変わることはないと思います。

 また、発生した空き家が、改修費の大きさ等から市場に供給されないというケースも多くあります。空き家状態が長引けばほとんどリフォームによる再利用の可能性はなくなります。古民家が洒落たレストランに生まれ変わったという例もありますが、それは例外でほとんどの空き家はやがて来る取り壊しの日を待っているのが現状です。

 

 

4.空き家問題への取組みの難しさ

多くの人にとって厄介者の空き家ですが、所有者から見れば私有財産であり、現時点で利活用の必要がないので何もせず保持している(外部から見れば放置)と思います。

NPOの立場としては、空き家の影響を受ける近隣住民の方ではなく、一人でも多くの所有者の方々に空き家の影響と利活用等の解決策のヒントを伝える機会を増やしたいと思いますが、個人情報の壁もあり、行政が持っているかもしれない空き家所有者のデータを入手することも極めて難しく、同年代の仲間が集まってNPOを立ち上げましたが想像したような成果は上げられずに今日まで来ていますがシルバーパワーを結集して頑張って行きます。

 

(株)日本環境マネージメント研究所代表取締役

NPO空き家安全管理ネットワーク理事長  新井 孝

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