更新日:2026.10.2
私は、当協会で微生物汚染対策検討委員会、厨房委員会、ビジネスモデル委員会と、視点の異なる複数の委員会に横断的に携わっています。衛生面、火災予防面、会員企業の事業活動と切り口は異なりますが、根底にあるのは「ダクト清掃の必要性を社会に広く訴求したい」という思いです。この度、業界誌『設備と管理』9月号(オーム社)に「法定義務とリスク管理から見るダクト清掃の実務~省エネ・衛生対策・火災予防につながる適切なダクト管理~」と題した特集記事(P26~P35)を執筆させていただきました。その内容を要約してお伝えします。詳しい解説は、ぜひ本誌もご覧ください。
Contents
空調ダクト清掃の法的位置づけには、曖昧さが指摘されます。建築物衛生法における空気環境の調整基準は「吹出口・吸込口」周辺に留まるとの解釈が一般的で、この不明確さが、ダクト清掃の優先順位を下げ、メンテナンスの遅れを招いています。長期修繕計画でも、ダクト清掃は空調機や熱源機器の更新と比べて後回しにされ、機器更新のタイミングで実施されることが多いです。給気・外気系統(SA・OA)は粉塵の飛散防止、還気・排気系統(RA・EA)は衛生改善や換気能力の改善が主な清掃目的とされますが、清掃周期を明確に定める法規はなく、フィルターの性能によって7~25年程度が目安です。しかし、法令上の義務が曖昧であることは、放置してよい理由にはなりません。長年清掃されていないダクト内部は、室内環境の悪化や感染症リスクの上昇、エネルギー負荷の増加にも繋がり得るのです。

当協会が全国15施設・1,215箇所で実施した調査では、経過年数が20~34年のダクトで、清掃前後の換気量が約4割改善したケースも確認されており、清掃履歴のないダクトほど換気量の低下が顕著でした。新型コロナウイルス感染症の流行を機に、換気は空気感染症対策の重要な柱として位置づけられ、一人あたり毎時30㎥の必要換気量やCO2濃度1,000ppm以下といった指標を保つうえでも、ダクトの汚れは見過ごせません。あわせて、オフィスの夏季の電力消費のうち空調が約49%を占めるというデータもあり、汚れたフィルターやダクトは空調効率を下げるため、省エネの観点からも清掃の意義は大きいといえます。


ダクト内に蓄積した粉塵は、吹出し口より室内へ飛散し、空気質を悪化させることがあります。粉塵に含まれるカビなどはアレルゲンにもなり得るため、利用者が過ごす空間の快適性・安全性の向上にも直結します。

令和6年の東京都内飲食店火災393件のうち、発見時燃焼状態の火災が308件、その内初期消火が成功したのは182件、大規模火災に繋がり得る初期消火が失敗したのは47件(内25%はダクト火災が原因)です。ダクト内部の火災は、堆積した油分に一旦火が入ると外部から気づきにくく、発見や初期消火の遅れが被害拡大に直結しやすい特性があります。清掃時期の判断基準として、JADCAでは厨房設備の排気ダクトは油膜厚さ0.1mmでの点検・清掃を推奨しており、消防庁では厨房設備の排気ダクトの点検・清掃と、火気器具上部に設ける排気ダクトは油膜厚さ0.4mm程度での点検・清掃を義務化しています。
法的な義務づけが不明瞭であっても、ダクト清掃が衛生・火災予防・省エネという複数の観点から重要な意味を持つことに変わりはありません。当協会は今後も、複数の委員会活動を通じて培われた多角的な視点から、ダクト清掃の必要性を会員企業の皆様、そして広く社会に向けて発信してまいります。