AIの世と空調屋の夢

更新日:2025.7.1

空調の未来は、AIとドローン技術により大きく進化する可能性があります。室内を移動しながら快適環境を保つ“飛行船ロボ”や“空調ロボ”が登場する日も近いかもしれません。若い技術者の斬新な発想に期待が寄せられています。

ギリシャ神話によれば人類はプロメテウスから火をもらうこととなっていますが、人類は火を手に入れて以来暖をとることが出来氷河期を生き延びることが出来ました。したがって暖房は太古から存在したといえます。これに対し明治初頭の冷凍機の発明、それに伴う製氷技術により、初めて冷たいものを手に入れることになります。それまでは氷室に蓄えた氷をほんの一握りの特権階級の人のみが、それを手にしたのでした。製氷が確立するとこれを用いて空気を冷やすことが出来、冷房が可能となりました。明治の後半になり空気を冷やすとともに湿度も制御する技術として装置露点温度が見つけられ、やっと空気調和の技術基盤が確立しました。

エアコン
その後いろいろな空調方式が採用されてきましたが、革命的な変革は実現しないまま今日に至っています。今日AI技術の進歩に伴い、いろいろな分野でのブレークスルーが期待されており、空調の世界でもその変革が訪れるものと推察できます。私のような古い技術者にその世界を見通すのは難しいのですが、一つだけ思いつくとすれば固定された装置による技術から自由に移動する装置への移行が考えられます。

自由に移動する装置には、私の昔の同僚の発想があります。彼の発想は室内に浮かべた装置があちこち移動し、熱だまりを見つけたら口を開けてパクパクと食べて処理するというものでした。その当時は面白い発想だが具体化するのは難しいかなと思っていましたが、最近のAIとドローン技術の進歩を見るとひょっとして可能なのではないかと思うようになりました。例えば蓄電池で室内に浮かび稼働可能な超小型の飛行船型ドローンに空調機を載せ、装置に室内空気を取り込み、その温度、湿度、清浄度などを各種センサで計測し適切に処理するような飛行船ロボのコンセプトです。

室内ドローン 
これに加え室内の床面を自由に移動できる超小型のロボット空調機も考えられます。これはお掃除ロボの応用です。この小型の空調ロボットを一人一台相棒としてどこに行くにも伴い、上述した飛行船ロボと同様に取り入れ空気を計測し処理し相棒に提供するという空調ロボのコンセプトです。さらに血圧や脈拍などの情報を処理しストレスフリーの空調の実現を図ることも期待できます。

飛行船ロボにしろ、空調ロボにしろ、当初は従来の部屋全体の空調と組み合わせ用いられると考えられ、全体空調は外気の供給と緩和された温湿度条件で設計し極力規模は圧縮されると思います。ここで両ロボの技術上の難題は加熱冷却用の媒体になります。例えば熱水を貯蔵する熱水タンクと冷却したブラインを貯蔵するブラインタンクを積み込むというものです。装置の小型化を図る場合、蓄熱をすぐに使い終わるという欠点があり、頻繁に熱媒を交換しなければならないという問題があります。これにはお掃除ロボのように、装置自体が移動して充電と熱媒入れ替えの出来るステーションを設けて対応することで解決できるかもしれません。チャージ中は他のお助けロボが代替することにします。

若い技術者諸君、もっと斬新な発想でAIを用いた空調について挑戦してください。

JADCA技術顧問 石田清治

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