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JADCAコラム

No.4  火災予防の視点から見るダクトクリーニング NEW

毎年、冬になると火災のニュースを目にすることが多くなる。今年も1月に入って、新年早々の渋谷のセンター街での火災が話題になったが、特に1月末の札幌の高齢者施設での火災で多数の方が亡くなったことは残念なことである。しかし、現在の日本を火災予防の視点から考えてみると、近年、大幅に改善されたといっても過言ではない。 筆者は大学で安全管理の講義をしているが、学生の話では一年以内に直火を扱った経験のある学生は全体の一割程度である。考えてみると、都市部においては家庭での調理はIH器具の普及に加えて外食や調理済み食品の利用比率の増加、暖房もエアコンの普及、さらには喫煙者の減少等により、我々が直接火気を取り扱う機会は大幅に減少した。今では家庭でマッチを見ることも少なくなっている。


言い換えれば、火気に対する一般社会の危険感受性は大幅に低下しているといっても過言ではない。従って、一般的に火気の取り扱いを甘く見る人が増え、石油やガスストーブからの火災発生の可能性の軽視、火気を使用しての調理に対して引火や周辺の小火の可能性の無配慮、万一火災発生時の初期対応や避難は想定外、このほかにも防火防災への配慮がおろそかになってきているのは容易に想像できる。一方では、社会は安全安心を当然のこととして強く求めているが、社会の安全が進化すれば、一般市民の危険感受性が低下していくのは当然と言える。


火災に関して最近のメディアを賑わすものとして、雑居ビルの火災等で避難路を物置代わりにしていたり、防火防災設備点検不備による逃げ遅れによる被災者の増加、中華料理店・ラーメン屋や焼き肉レストランのダクトからの火災発生と火災の拡大が挙げられる。これらは火災発生場所が繁華街にあることから、大きく報道されることが多い。 レストランや食堂からの火災に起因する例として糸魚川の大火が挙げられる。これを契機に、飲食店の空調ダクトに焼き肉の煤の蓄積や揚げ物や炒め物の調理によって生ずる油脂がたまり、調理設備のガスバーナーからの引火、蓄熱した煤による自然発火がダクト火災の原因になることが、改めて認識されることとなった。これらの災害事例やダクトクリーニングの必要性、クリーニングの基準等についてJADCAの花木環境委員長が取りまとめ、「近代消防、平成30年1月号」に投稿されているのでご一読いただきたい。


この他にも産業技術総合研究所安全科学研究部門が発行しているメルマガ「さんぽのひろば」1月31日号でも焼肉レストランや工場のダクト火災に関して特集記事が記載されており、ダクト清掃の重要性が強調されている。


一般市民は便利で快適な生活の享受は当然のことと思い込んでいるが、その反面、どこに危険が潜んでいるかに目が行き届かなくなり、ひとたび火災が発生すると複雑化した建物や都市構造の中で対応が困難となる。また、安全な社会環境の中では消火設備の適切かつ速やかな使用による初期消火や火災の拡大防止を着実に実施するための火災に対する知識や経験を有する人材も少なくなっている。


空調ダクト内での油煙や燃焼残渣による火災発生防止や、火災発生時の火炎伝播と拡大防止のための空調ダクトの定期的なクリーニングとダンパー類の確実な作動確認は、社会の安全・安心を確保するための必須項目であることを改めて強調したい。 空調ダクトクリーニングは人に知られない地味な作業であるが、これの重要性が広く認知され、社会の理解が進むことを願っている。

2018年2月1日
JADCA環境経営委員長
エコステージ協会全国理事・東京地区第三者評価委員長
東工大非常勤講師、横浜国立大学環境情報研究院研究員
小山富士雄